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ハルツーム州障害児中核支援校の教師との意見交換会
作成者:モハメド・オマル・アブディン
説明
中核支援校とは、ハルツーム州の教育省が指定した七つの小学校のことを指す。これらの学校の主な役割はそれぞれの地域の障害児を受け入れ、彼らの障害種別に応じて必要な教育を提供し、4年次から障害児を近所の小学校に戻すというものだ。
ハルツーム州の教育省は既にそれぞれの学校に障害児教育を担当する教師を配属し、プロジェクトの実行段階になっている。今回の意見交換会では3名の教師と以下の議題について議論を交わした。
1.教育省の方針の評価
2.それぞれの学校の状況
3.これからの見通し
4.CAPEDSに期待すること
以下で、各項目についての詳細を述べる。
1.教育省の方針の評価
来て頂いた3名の教師はそれぞれ自身が全盲である。中核支援校は視覚障害児に対する教育を主に想定して作られたようであると彼らは口を揃えていたこともあり、彼らと教育省が作ろうとしているモデルについて話し合った。教育省は各支援校につき一つのクラスを設け、そのクラスに地域の障害児を集めて1〜3年の間点字教育を行いつつ、障害を持たない生徒と同じ授業を受けられるように徐々に慣らしていくというものである。
この方針に対し、3人の考えは二つに分かれた。賛成の立場をとったHさん(30歳の全盲の男性教師)は、この方針を実施するためには入念な準備と生徒たちを送迎するスクールバスが必要となると話した。
この意見に対し、同じ地区に配属されているIさんとEさん(全盲、20代後半と思われる女性教師2名)は批判的であり、その理由としては以下のようなものが挙げられる。
1. 彼女たちが配属されている地区はハルツームの中でももっとも大きな地区であり、約256の小学校がある。中核支援校の一つのクラスだけでは、対象となる全ての生徒を受け入れることはできない。
2. その地区は広すぎるため、通学が困難になる生徒が出てくる。
その代わりとして、彼女たちはその地区内の小学校を回って障害児に対する心理的サポートのノウハウを教師たちに教えることや、地区内のそれぞれの学校から教師を1名選定してワークショップを開くことなどを提案している。
2.それぞれの学校の状況
まず3人の考えが一致している点について述べる。各地区の教育委員会はこの中核支援校に対して非協力的な態度をとっている。その理由として、教育省と地区の教育委員会の連携がうまくいっていないこと、支援校でのクラスを作るために必要な費用の負担をめぐって亀裂が生じていることが挙げられる。背景には、政府が打ち出している地方分権化によって各地区がその地区内の教育、保健などといった公共サービスを独自の財源でまかなわなければならないという厳しい状況があると考えられる。そのため各地区の教育委員会にとっては、中核支援校は優先課題とはなりにくい。実際に、Hさんが配属されている地区では中核支援校における取り組みがまだ開始されておらず、支援校になってもよいという小学校があったが教育委員会は具体的な手続きを進めていない。Hさんが配属されてからもう2年が経とうとしているが、彼の訴えに教育委員会は聞く耳を持たないという。
IさんとEさんに関しても状況は似ているが、そもそも彼女たちはひとつのクラスに障害児を集めることに対して批判的な立場をとっていたこともあり、各小学校をできる限りまわって、教師や生徒たちに対して障害児が必要とするサポートについて指導することなどが主な職務となっているそうだ。ただ、前述した通り彼女たちが担当している地区は非常に広く、交通手段がない限り遠方の学校まで足を運ぶことはできない。さらに、意識啓発までは可能だとしても、障害をもった生徒たちに対して直接必要な点字技術などを教える余裕はないという。
3.これからの見通し
これまで述べてきたように、ハルツーム州の教育省は中核支援校プロジェクトを打ち出したにもかかわらず、2年が経過した今もプロジェクトの実施には至っていない。また各地区の教育委員会の理解を得られないことには、こうしたプロジェクトが軌道に乗ることは困難だと思われる。さらに、教育省と教育委員会の責任を明確にする必要があるとも考える。両者の間での十分な連携のもとにひとつのチームとして動かない限り、こういったプロジェクトは「絵に描いた餅」で終わってしまうだろう。最後に最も問題であると思われるのが、教育省の特殊教育係における体制の脆弱さである。特殊教育係の体制強化は今後の大きな課題であると思われる。
4.CAPEDSに期待すること
こうした悲惨な状況を聞き、CAPEDSにどういうことを期待するか尋ねたところ、以下のような解答が得られた。それは、ひとつの支援校でクラスが軌道に乗るまで支援してもらえないだろうかということであった。こうしたプロジェクト計画が実行されずに時間が経過すれば、廃止される可能性さえ出てくるだろうといった意見も聞かされた。私も同じ意見ではあったが、今のCAPEDSにこのプロジェクトを支援するだけの財源があるかは不安だったため東京へ話を持って帰ることにした次第である。
この意見交換会から感じたこと
以前と比べ、障害者教育の問題は教育省でも取り上げられるようになった。特殊教育係が創設されたことは大きな進歩である。しかし、教育省の中でも、特殊教育係がまだまだ「係り」という位置づけでしかなく、「特殊教育部門」というところまでいっていない。そのため、割り当てられる職員数や予算も少なく、効果的なプロジェクトを立案してもそれを実行に移すための資金を欠く状況である。
そのためCAPEDSの基礎教育支援事業として、一つの中核支援校において立案段階で停滞しているプロジェクトが「クラスを開く」という実行段階にまで運営されるようになることを目指して支援を行ってもてもよいのではないかと思う。ただし、その際には以下のことに留意する必要がある。
1.1年間限定で支援を行う。
2.CAPEDSが行った支援がきちんとプロジェクトに使用される保証を得ること。
そこで問題となるのが以下の点である。
1. 中核支援校は教育省が進めているプロジェクトなので、支援を行う場合は教育省を通す必要がある。ただし、上述したようにそれがきちんとプロジェクトに使われるかどうかは不安である。
2. 支援することで、教育省もこのプロジェクトに予算を当てることを断念する可能性がある。
3. 1年限定で支援した後の支援体制がうまくいくかどうかは不安である。
今後も現地と連絡を取り合いつつ、CAPEDSがこのプロジェクトを支援するかどうかについて決めていきたい。
以上
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